岡本眞ブログ
2022.02.01
賃上げ統計について
マスメディアの統計について
これからの時期、マスメディアが盛んに流す労働関係調査には仕事柄、私は常々、疑問を思っています。例えば春の賃上げ額(率)であったり夏・冬のボーナス額のニュースです。
全国紙一面に今年の冬の賞与は100万円、とか賃上げは1万円などの数字がアップします。この数字が嘘、出たら目とは言いません。しかしこの数字が躍る内容は主要大企業の平均であったり、官公労職員の平均である場合が多いのです。
私たちが常に関与する企業は、地域に密着しそこで地道に事業を行い、根付いた中小企業がほとんどです。
これら事業主の目から見れば、世間の実情からはかなり開きがあり、受け取る感覚にも大きな温度差があるように思えてなりません。
例えば賃上げの統計なんかを見ても実際は集計会社のうち賃金を改定した会社、したくてもできなかった会社もあるはずです。
本来ならそのどちらも集計の母数に入れて平均〇〇〇〇円と出すべきではないか、と思います。しかし多くの統計は、賃上げ実施会社の平均です。しかも企業内に労働組合もある恵まれた会社です。
A会社は5000円、B会社は0円ならば平均で2500円であるはずですね。この辺の統計の綾が、分析には大事だと思うのです。
その意味で私は地域の会社の実情に詳しく、また統計に工夫をしている信用金庫のレポートを重宝しています。
その1つが大阪シティ信用金庫(同総合研究所)の調査で、専属スタッフが中小企業経営のさまざまな課題等を調査し、分析結果を調査レポートで提供しています。
支給・無支給の割合が大事
昨年末の冬のボーナスの統計を紹介してみましょう。
支給企業は2年ぶりに増加というキャッチフレーズの記事ですが、第1表で今回、支給する企業は58%で4.6ポイント増加した一方、支給しない企業(少額手当含む)は41.4%で同4.6ポイント減
少したとしています。
支給した企業(624社58%.6%)の1人当たり平均支給額287,945円であるが、図に見る支給しない41.4%の企業を含めると母数単純平均で203,500円となり、大阪シティ信金の調査の実情は後者の額がより近いものと考えれます。このように一見、大きくはやされる数字だけをとらえてあたかもそれが真実のごとく判断するのは早計のように考えます。統計の背後にある現状を冷静にとらえる必要がありますね。