岡本眞ブログ
2013.08.10
今年の夏休み



今回は「対話する漱石–坊っちゃん、門、明暗を読む」内田道雄先生(東京学芸大名誉教授)
「科学3題:ブラックホール・太陽・核融合」一丸節夫先生(東大名誉教授)
「古典主義とロマン主義~かたちとこころ~」香山壽夫先生(東大名誉教授)
の3講座を聴講しました。

それぞれに興味深いものでしたが、何よりも感銘を受けたのは、講師陣です。その界の権威でありながら誠心誠意な語り方、教壇での真摯な立ち振る舞い、親しみやすいお人柄です。決して偉そうな態度や口調ではなく、そうかといって自分の今までの研究成果や理論体系には毅然とした自信が漲っていて、聴く者になんともいえないオーラーを印象づけるのです。
あ~あ、やはり世界を代表する研究者とはこのような魅力というか人を引き込む力を持ち合わせているんやなあ~と感心した次第です。
この講座は、大正6年から始まり今年で第97回だそうです。県内外から多数の受講者が集まる生涯学習の源です。
学生時代にこの木崎湖湖畔で合宿をした想い出があるので、その淡い記憶とともに昨年から僕もこの時期の受講を楽しみにしています。
ただ若者の姿がなく大半は70歳代の男性に占められています。1日500円でこんな立派な先生方から素晴らしい講義が聴けるのにと不思議な気がしますが、近くの湖畔の海水浴客やボート遊びする若いカップルの声をきくと「しようがないなあ~、僕も20代なら湖で遊びに興じるやろうな。」と思ってしまいました。
熱心に講義を聴くお年寄りの目は真剣そのもの、最終講の4時限目になっても微動だにしない聴講態度も僕にとっては好奇の的でした。講師先生もこういう受講者に応えようと手抜きは一切なく意見や質問に真面目に応えていらっしゃいました。
今、分からないので調べて後でお手紙をおくります、との先生もおられました。
大昔の想い出ですが、僕がまだ大学3回生の頃、京都市植物園の図書館に通っていたことがあります。そこで毎日、古文書コーナーで明治時代の新聞を虫眼鏡で字を拾っていた老人がいらっしゃいました。
年齢は90代と思われる(腰は曲がり、足元も頼りない、失礼ながら余命いくばくもない感じを受けたのですが)品の良い白髪の老人です。1字1字を大きな虫眼鏡で追い、そして大学ノートに何か、写しておられたのです。今でもその老人のお姿、顔立ちをはっきり覚えています。目は爛らんとして勢いがあり、まさに寝食を忘れた向学心の表情です。
そんな普段は忘れていた記憶が、会場となっているこの静かなたたずまいの信濃公堂にいるお年寄りをみて思い出されました。
それにしてもここ大町市の湖畔は涼しいですね。湖の水面を見ているとゆったりして時間が止まりそうです。透明な水底を見ていると小魚がいっぱい藻のそばにいました。若い釣り人がいたので「兄ちゃん、何、釣ってるん?」と話しかけると「バスです」とのこと。
やっぱりここでも外来魚か、とがっかりしました。
ワカサギや湖エビ、もろこなどが貪欲なブラックバスに食い荒らされているんでしょうか。
講義の昼休み、湖畔を歩いていると水面から大きな影が突然波を立てて近づいて来ました。
「ジョーズ!!??」( ネッシーとはさすが思いませんでした)
1メートルほどの鯉の群れでした。冷たいアルプスの水に満ちた湖の主なんでしょうね。
気持ちよさそうにゆったり泳いでいる姿に、ほっと癒されて午後からの授業に臨むことができました。