オフィス人事教育のふれあいブログ

2017.01.15

働き方改革 「同一労働同一賃金」ガイドラインに思う

「非正社員の待遇改善を実現する」とのねらいから働き方改革のコアとなる「同一労働同一賃金」のガイドラインが28年末、政府から公表されました。
しかし今回のガイドラインはあくまでも「案」にすぎず、法的拘束力を伴うものではありません。ガイドライン案が実効力を持つには、労働契約法など3法の改正が必須です。正社員と非正規労働者との待遇差をめぐってその不合理な差別の立証責任についても企業ではなく労働者が負うこととなり、企業に対して明確化を求める割には、中途半端な感じがしないでもありません。
  

報告書では、(1)正社員と非正社員の賃金決定基準の明確化、(2)個人の職務や能力等と賃金との関係の明確化、(3)能力開発機会の均等化による生産性向上、等があげられ「認められる例」「認められない例」別に事例が示されています。
今後、非正規労働者に昇給や賞与の支払いを課す対応は、総人件費のアップにつながりかねず企業の多くが人件費抑制をにらみ正社員の賃金体系・社内規定の抜本的見直しに踏み込まざるを得なくなっていきそうに思います。
具体的には、基本給、賞与・手当、福利厚生、教育訓練・安全管理の四つのテーマに関して、非正規労働者をどのように待遇すればよいか、を示しています。
以下その概要を記載してみると、
(1)基本給
①基本給について、労働者の職業経験・能力に応じて支給しようとする場合、基本給につ、無期雇用フルタイム労働者と同一の職業経験・能力を蓄積している有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、職業経験・能力に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。また、蓄積している職業経験・能力に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。
(2)賞与・手当
①賞与について、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同一の貢献である有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、貢献に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。また、貢献に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。
②役職手当について、役職の内容、責任の範囲・程度に対して支給しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同一の役職・責任に就く有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、同一の支給をしなければならない。また、役職の内容、責任に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。
以下③~⑪の手当については原則、無期雇用フルタイム労働者と同一の業務条件に当たる有期雇用労働者又はパートタイム労働者には同一の支給をしなければならない。
③業務の危険度又は作業環境に応じて支給される特殊作業手当
④交替制勤務など勤務形態に応じて支給される特殊勤務手当
⑤精皆勤手当
⑥時間外労働手当
⑦深夜・休日労働手当
⑧通勤手当・出張旅費
⑨勤務時間内に食事時間が挟まれている労働者に対する食費の負担補助として支給する食事手当
⑩単身赴任手当
⑪特定の地域で働く労働者に対する補償として支給する地域手当
(3)福利厚生
原則として同一の利用を認めなければなりません。
①福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室)
②転勤者用社宅
③慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障
④病気休職(労働契約の残存期間を踏まえて、付与)
⑤法定外年休・休暇(慶弔休暇を除く)
(4)その他
①教育訓練について、
②安全管理に関する措置・給付
現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実施しようとする場合、同一の実施をしなければならない。また、職務の内容、責任に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた実施をしなければならない。
3.派遣労働者
派遣元事業者は、派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情が同一である派遣労働者に対し、その派遣先の労働者と同一の賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならない。また、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情に一定の違いがある場合において、その相違に応じた賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならない。

いずれも当然の原則ですが、仮にそれらが実現したとして、どのような道筋で賃金格差が是正されるのか。そのための処方箋が必要ではないでしょうか。競争的な労働市場では、賃金の低い企業から高い企業へと労働者が移動します。もちろん生活のさまざまな状況で就労機会を選択するのは労働者本人です。しかし正規と非正規が固定化し同じ企業内でカースト制度のような身分制が定着してしまうと、その自由な労働移動を妨げる大きな障壁になってしまいます。ガイドラインの役割はその障壁を取り除く道しるべにあると考えますがいかがでしょうか。